西日本新聞

特集

第2回 簡潔表現で訴える

新聞記者に取材されるプレスリリースの作り方 2/3
第1回 記者に驚きを与える
第3回 企業の価値を高める

■作成のコツとは一体…

 それでは、実際にリリースを作成する場合の具体的な注意点を見てみましょう。


【リリース事例X】
リリース事例X】(別画面が開きます)をみてください。内容は勝手に創作してみたものですが、インパクトがなく文章も冗長で、しかも伝えたい内容の割に分量が多すぎます。先にご説明した「理想的なリリース」とは程遠いのは一目瞭然です。

 ざっと気付いた改善点だけでも、次のように九つもあります。
1.第一に伝えたいはずの「見出し」がない
2.冒頭の「拝啓」に始まる四行のあいさつは、ニュース要素ではなく全く不要
3.「地域おこし」に始まる三行は書き出しにしては説明が回りくどい
4.ブランド酒の名前「×××」が三回も登場している
5.「業界初」「当社初」というニュース要素が紛れて目立たない
6.酒蔵開放やレストランオープンの時間が不明
7.提携先の○○酒造やレストランの電話番号が欠落
8.ブランド酒の概要がなく、特徴がつかめない
9.末尾の「ほかの環境事業」は別の機会にリリースする。今回とは無関係

 伝えたいことは「ピラミッド型」に整理することが必要です。
 「ピラミッド型」とは、最もインパクトが強いキャッチフレーズのような見出しを頂点にして、続いて短い文章のリー ド、次に本文へとつなげることを意味します。つまり、最初に伝えたいことをシンプルに短めに表現します。見出し、リード、本文の順で、必要と思われるポイ ントを説明します。

(1)キーワードを拾う
伝えたい内容のキーワードはどれか。いくつか拾ってみてください。それがそのままキャッチフレーズに当たる「見出し」になるはずです。強烈な見出しであればあるほど目を引きます。
事例X】では、「業界初の地域限定ブランド酒」がニュース。どこと提携し、発売本数はどの程度なのか。付随する酒蔵開放や産直レストランも、気になる要素です。
とりわけ、リリースでは「(県内、九州で)初めて」「業界で第一号」「画期的な(技術)」「最大規模」など特筆すべ き要素があれば、それが重要なキーワード。ニュースの見出しに取りやすく、記者も必ず注目します。新聞を見ると、こうした見出しをしばしば見かけることが あるはずです。

 また、社会的な影響力や価値がある情報だと、記事化につながりやすいのは事実です。例えば、環境にかかわりのある事業や商品などは社会貢献度が高く、注目される機会が高まります。

(2)簡潔な表現を
 記事のリードに当たる、冒頭の書き出しには時候のあいさつなどは不要です。リリースはいわゆる礼状などとは違うからです。見出しの内容を簡潔に補足する目的で、説明してみてください。書き出しは「○△社は…」などとした方がすっきりします。

 リリースで、簡潔な表現を生み出すために意識する要素は次の通りです。
1.個条書きを意識する
2.主語、述語の関係を明確に
3.段落を付け、メリハリを付ける
4.句読点をうまく使い、歯切れよく区切る
5.強調したい言葉や数字は、文字を大きくしたり、字体をゴシック体に変えて目立たせる
6.同じ固有名詞の繰り返しは避ける
7.語尾は「です」「ます」の断定調にする。「と思います」などだと、内容の客観性を問われかねない

(3)長文は避けよう
 「とりあえず長い文章さえ書いておけば、記者の方で適当に読みこなして理解してくれるだろう」というような発想では、よいリリースは作れません。メリハリのない冗漫な文章は、見苦しく見えるだけです。

 また、テレビに限らず新聞もどんどんビジュアル(視覚)化が進んでいます。このため、写真やグラフ、表などの一目で分かるようなデータを添えると、リリースの内容がすんなり理解できます。実際に報道される場合、写真やグラフなどがある方が分かりやすいのです。

【リリース事例Y】

以上の点に注意しながら、【事例X】を修正すると【事例Y】(別画面が開きます)のようにすっきり見やすい内容になりました。【事例Y】のように、簡単な「会社概要」(文章例は省略)が添付されれば、もっと親切です。

 あくまで事例なので、皆さん流のリリースを編み出してください。

(4)基礎となる「5W1H」
記事を書くための主な要素は「5W1H」と言われます。
5Wは、Who(誰が)
When(いつ)
Where(どこで)
What(何を)
Why(なぜ)
1Hは、How(どうやって)

 リリースを作る場合、おそらく最初から四つ目までのWは、気を付けて書き込むはずです。ところが、残る「Why」「How」の二つは、おろそかにしがちです。この二つこそ、記者が最も知りたい部分のことが多いのです。

(5)「5W1H」+アルファ
 さらに、リリースには「プラス・アルファ」の要素が不可欠になります。いくつか挙げると、
「価格・売り上げ目標など」(金額)「生産数・販売量など」(数量)「(目標達成などは)いつまでに・(事業開始などは)いつから」(時間の推移)などがあります。
 リリースする内容によって必要となる要素はほかにもあるので、場面やケースに応じて何が必要か、柔軟に考えてみることが大切です。

第1回 記者に驚きを与える
第3回 企業の価値を高める

藪 宏之(やぶ ひろゆき)

西日本新聞編集委員
藪 宏之(やぶ ひろゆき)
昭和35年生まれ。福岡県出身。
同58年、西日本新聞社入社。社会部、宮崎総局、都市圏部(現在の地域報道センター)、長崎総局、東京報道部、論説委員会、経済部デスクなどを歴任。


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特集 プレスリリースの作り方